デメリットしかない?「手当」が付いて「基本給」が下げられる仕組みとは

毎月もらう給与明細には、労働に対する会社の対価が明確に記されています。働いた分だけ給与を貰うのは当然ですが、給与改定があったり転職で新しく入る会社を探していたり、求人票を見ていると「基本給」以外にも様々な項目があります。「基本給」が少なくて「手当て」が多い会社、一見魅力的に見えますが本当に従業員の為に福利厚生を充実している会社なのでしょうか。

給与明細の項目について

給与明細には様々な「支給」「控除」「勤怠」項目が存在します。

【支給】
基本給/役職手当/住宅手当/家族手当/時間外手当/資格手当/交通費

【控除】
健康保険/厚生年金/介護保険/雇用保険/所得税/住民税

【勤怠】
遅刻/欠勤/有給休暇/残業時間/休日出勤

支給(総支給額)から控除を引いて手取りが計算されます。大企業になるほど支給の手当が多く付いたり、控除に例えば積立金・親睦会費など独自のものが増えてきます。寮に入っていれば社宅の寮費や、株があれば持ち株など中には「何これ?」という訳の分からない手当てを作っている会社まであります。

基本給が下げられる、もしくは基本給が異常に低いとはどういうことか

簡単に説明すると例えば1ヶ月の支給額が25万円だった場合を考えてみます。分かりやすくするため「基本給」「交通費」のみとします。

【基本給】25万円
【交通費】1万円

この場合の総支給額は26万円ですが、この基本給を25万円だったものを5万円引いて「20万円」にするというものです。いやいや20%の減給はちょっと・・・普通ならこういった反応になりますが、会社側は「手取りは全く変わらないから納得してくれ」というのです。

【基本給】20万円
【交通費】1万円
【スキル向上手当】2.5万円
【地域勤務地手当】2.5万円

スキル向上手当ては、自分で勉強する為に会社が無条件で負担するもので、地域勤務地手当は物価を考慮した地域別の手当てを無条件で負担するというもので、これに変更するというのです。総支給額は変わらないため、厚生年金・健康保険等の金額は変更になりません(全ての支給額からの標準報酬月額による計算の為)。一見して特に何も変化が無いように感じますが、このようになると従業員側に何のメリット・デメリットがあるのでしょうか。

従業員にメリットは一切無し、あるのはデメリットのみ

基本給を下げて手当てにするという事は会社にはメリットしかなく、従業員にはデメリットしかありません。なぜなら賞与(ボーナス)と退職金は基本給で計算されるからです。

賞与が3か月分とすると先ほどの25万円では額は「75万円」となり、20万円の場合は「60万円」と15万円も差が出ます。退職金も同様に基本給と勤続年数を掛けて計算されます(業績や個人の評価があるところも)ので、基本給という金額は非常に重要です。

また時間外の残業代・休日出勤代も基本給から計算されるため、基本給が20%下がれば残業代も20%下がります。また手当てというものは景気に左右され、途中で無くなったり変更になる可能性があります。皆勤手当てを1万円から5千円にされたり、食事補助も1食当たり引き下げられることもあります。

また昇給額のパーセントも基本給から決められており、基本給自体が少ないと上げ幅も自然と低くなります。

基本給を下げることは難しいが、手当てを下げることは簡単

基本給を下げることは容易ではありません。それは下げる場合に下げる対象となる従業員の「同意」が必要になるからです。これは労働契約法の9条に明記されています。

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

出典:労働契約法 独立行政法人労働政策研究・研修機構

ただし合理的な理由がある場合はこの限りではありません。例えば基本給を下げなければ会社が倒産する、または給与の延滞が起こるなど会社運営自体が危ぶまれる等です。この場合は拒否することが難しいといえます。会社に労働組合があれば労働組合とも話し合いや合意が必要になります。

手当ては基本給より変更することは簡単です。例えば「物価手当」は物価が変動になった、「食事手当」は食事に対する考え(1食当たりの金額)が変わった、「役職手当」は役職が変更になったなど会社の業績以外での理由をつけやすいのです。他にも有給休暇を取得したという理由で、皆勤手当てを外す違法な会社もあります。

この会社給与はほとんど上がらないな・・・求人票から感じよう

正社員で事務職の求人票がありました。年間休日数が125日と完全週休2日制で土日祝が休日と書いてあります。求人票の給与を見てみると何が何でも支給額を抑えたい・・・けれどいい人材をある程度確保する為に賞与月数は多く見せたい、という考えが分かります。

【基本給】11万円
【出勤手当】2万円
【物価手当】2万円
【食費手当】2万円
【就業時間】9:00~18:00(90分休憩)

賞与は4ヶ月と書かれていますがもちろん11万円の4か月分で、1ヶ月の総支給額17万円からではありません。休憩が60分ではなく90分なのも最低時給に引っかからない悪知恵でしょう。労働基準法では8時間の労働に対して最低1時間の休憩を入れなければなりませんが、別に1時間30分でも2時間でも休憩を入れることは問題ありません。

稀にですが休憩時間が多い会社が有ります、この会社の離職率は高い・・・それはなぜでしょうか。それは休憩時間中(勤務時間外)は給与が発生しないからです。拘束時間は長くしておきたいが時給換算で少しでも安くしたい場合(最低時給に近づけたい)に有効な方法です。

一方的な給与改定・引き下げに納得できない場合は

予め給与改定についての話し合いがあればよいですが、合理的な理由が無いにもかかわらず強制的に下げてきた場合、労働基準監督署や弁護士に相談するという手もあります。減額分の請求や証拠集めが必要になりますが、小さい会社では居辛くなるのが目に見えていますし、もし1人だけ成功すると周りから冷たい視線を浴びるかもしれません。どうしても納得できない場合は、会社の従業員複数で交渉や相談をするようにしましょう。