残業代は「未申請」なので支払いません、は通じるのか?

毎日仕事を頑張っても残業代が出なかったり、少しは出るが一部が未払い・不払いだったりと問題になることがあります。中小企業では未だにサービス残業がまかり通っていることもあり、法律を引き合いに出してもごまかされたり証拠を隠されたりとトラブルになるケースも増えています。残業代を支払うとしながらも、「あなたの残業申請が無かったから、私達は許可を出していないので支払わない」と拒まれるケースもあります。


残業代は法律上は必ず支払われるものか?

通常の業務以外で余分に仕事をすることで支払われるものが「残業代」です。これは割増賃金と言われるもので、「1日8時間労働」「1週間40時間」を超えたり、他にも深夜手当(午後10時から午前5時)や休日手当が割増に該当します。

時間外労働:2割5分以上
休日労働:3割5分以上
深夜労働:2割5分以上

中小企業以外での大企業では1ヶ月に60時間を超える分については、5割以上と大幅にアップします。1時間あたり1,000円の時給換算なら1,250円となり、60時間を超える分は1時間あたり1,500円となる計算です。

参考:労働基準法の基礎知識 厚生労働省

なぜ残業をするのか、命令されたから?自主的に?

ではなぜ「残業」が発生するのでしょうか。残業する理由として多いのが主に4種類存在します。

1:残業代を稼ぎたいから
2:残業をすることで更に成果を出したいから
3:命令されたから
4:仕事が終わらないから

ここでポイントは「本当に残業をする必要があるのかどうか」です。3の命令と4の仕事が終わらないは当然でしょう、業務命令と本日中に片付けなければいけない場合は明日に回す訳にはいきません。

2は業務時間内に仕事は終わっており、更に売上や成果を出すための残業、必ず結果が出れば良いですがそうでない場合は必ずしも「残業は必要である」とは言えないかもしれません。

1の残業代を稼ぐためにというのは、本当に仕事をしているのかどうかも怪しいものです。「調べ物をしている」と言うだけでずっと残っていたり、中には何もしないでずっと残ってるだけでお金を稼ぐ方もいるでしょう。

自主的な残業は残業代を支払わなくて良い?

会社から上司から直接の命令がなく、自主的に残業を行っている場合の残業代(残業手当)は出るのでしょうか。答えは「黙秘」していれば出す必要がある、というのが一般論です。

「残業をしてはいけない」という命令がない場合は、残業代は支払わなくてはなりません。しかし、残業するなと言われて残業していた場合は命令違反になるため、残業代は出ないと考えられます。

申請無き残業は残業ではない、と会社が言っている

残業代を少しでも節約したい会社では残業を「申告制度」のシステムにしているケースがあります。つまり残業をする場合は前もって「残業をします」と上長から書面で提出するように命令されており、それがない場合はどんなことがあろうと残業代は出さないというものです。なぜ、いつ、どういう理由で、どれだけ残業するのかを説明するのです。

残業する目的は業務に関わることならまだ良いですが、中には自主勉強や自主学習・自主活動・自主研修といった個人的な事で残業をして稼ぐ輩がいるので、それを防止する目的が建前ではあります。

しかし正式な理由があっても難癖をつけて承認されず却下されるケースもあり、「申請したくても申請できない&許可してくれない」となる場合があります。

ただしこの申告制度自体が「指示が出ていない・許可を出していない残業代は出さない」といっているようなものですから、場合によっては労働基準法に抵触する恐れがあります。

・仕事の量が多すぎて終わらない
・納期が近くまで迫っている

このようなやむを得ないケースによっては、暗黙のうちに上長から支持があったと認めざるをえない場合(黙認している場合)があり、裁判で争うこともできるでしょう。やむを得ないケースで黙認していれば、申請をしなくても残業代を支払う必要性が高い、と言えるのです。

申請は認めるが一部のみ?

中には残業時間の申請は認めて残業手当は出すが、30時間までしか認めない、残りは支払わないなど悪質なところもあります。日本経済新聞にて2017年の三菱電機の事件が載っています。

「上司から残業時間の過少申告を強要されていた」とも主張。14年2月は実際の残業が160時間だったのに59時間と申告したと説明した。

出典:社員に違法残業疑い、三菱電機を書類送検 神奈川労働局

160時間というと1ヶ月20日出勤だとすれば1日8時間の残業となります、9時から18時までなら毎日朝の2時までとは真実ならば異常です。労働局や労基署が動いてくれればブラックは根絶されていきますが、十分な証拠や証明できる根拠が無ければ動かず、解決は中々難しいのが現状です。

残業代で揉めないように固定残業代を導入したが・・・

残業代やサービス残業で揉めたり裁判になるケースが増えたことから、みなし残業として「固定残業代」を就業規則に入れている企業があります。

・月給:20万円(但し固定残業手当45時間55,000円分含む)

このケースでは基本給が145,000円となり残業手当が55,000円という計算になります。固定残業代とは働いても働かなくてももらえる手当といえますが、実態は残業手当の負担を防ぐために「基本給」を下げて固定残業代を導入している企業が多いのです。残業代が無ければ基本給はかなり安い、ということを覚えておかなければなりません。