海外出張を拒否すれば解雇?どうすれば拒否できるのか?

国内であれば東京出張や大阪出張、北海道や福岡なら美味しいものもたくさんあり、楽しみもあります。しかし海外出張はそもそも国が異なるため、文化や風習などに気をつけなければなりません。最近では治安の悪いところで巻き込まれる方も増えており、国によっては行きたくないと思える場合があります。しかし拒否することは出来るのでしょうか。


海外出張とは?

1週間や2週間と期限を決めて、海外に仕事に行く事を言います。海外の工場や取引先との商談、ギフトショーなどの展示会や仕入れなど様々な業務があります。あまりに長い期間になると、転勤や出向という言い方もされます。

見知らぬ国へ旅をするつもりで、ワクワクドキドキの冒険が・・・と思えるなら良いですが、最近ではテロや人質事件もあり、商社などが巻き込まれるケースが後を絶ちません。特に親日で無い国では、酷い対応をされるくらいならマシですが、犯罪のターゲットになるケースもあり、行きたくないと思うのは当然の事です。

海外出張が嫌なら会社の事業内容を考慮すること

会社の就業規則を確認しましょう、労働協約・就業規則などで「転勤や出張」について明記されていれば断ることで、業務命令違反として懲戒処分の可能性が出てきます。

もっと分かりやすく説明すると、スーパーのレジ打ちとして募集して応募してきたものがレジはやりたくない、と言っているようなものです。そもそもレジを打ってもらう為に雇ったのだから、やってもらえないなら解雇というわけです。

ですが、規則に記載が無い場合も多く、商社や世界的な大企業であれば海外出張も覚悟して就職・転職する必要がありますが、そこまででない企業ならば「まさか海外出張なんて言われないだろう」と安心して仕事に就いている場合も多くあります。

海外出張は雇用形態に関係なく発生する

一般的には海外出張は拒否することが出来ません、それは正社員・契約社員・アルバイトを問いません。

ご相談の件につきましては、アルバイト用の就業規則において別途定めが無ければ、正社員と同様の金額の出張手当を支給しなければなりません。確かにアルバイトの場合ですと、海外出張はごく稀でしょうし仕事内容も正社員と比べますと密度が低いでしょうが、異なる手当内容とする規定上の根拠が存在しなければ、手当を無支給または減額することは出来ませんので注意が必要です。

出典:アルバイトの海外出張時の手当について

正社員だから、アルバイトだから海外出張・・・というのは関係ありません。アルバイトでも正社員と同じように働かされている方も多く、アルバイトが海外出張命令を受けることも十分あり得ます。その際の手当ては特別な規定が無い以上は正社員と同じように支給されます。

海外出張を拒否すると懲戒解雇?

どのような例があるのでしょうか、いくつか見てみましょう。

会社からの命令で治安の悪い国に出張命令がでました。
防弾チョッキを買ってくれるそうですが、そんなところに海外出張の当社規程の日当5千円で行けと言われています。断ったのですが、正社員で総合職だから転勤や出張の拒否は認められないと言われています。

出典:治安が不安定な地域に海外出張された方に質問です。

会社から防弾チョッキを買ってくれるそうですが、1日の手当ては5千円で正社員の拒否は認められないと会社側から言われているとのこと。行かなければ行けないのでしょうか、実はこれ後述しますが労働契約法に違反する可能性があります。

まず、入社の際の雇用契約書に「海外出張あり」という条件が入っていたならば、出張を拒否することはできないというのが大原則である。海外出張の可能性も含めて承諾したからこそ雇用契約を結んだのだ、と法的には解釈されるからだ。
また、雇用契約書には海外出張が条件として入っていなかったとしても、就業規則に海外出張が書かれていて、入社時に就業規則に包括的に同意しているような場合も、拒否できないのは同様である。
だが、いかなる場合にも会社の海外出張命令は絶対で、これを拒否することができないというのは言いすぎである。というのも、労働契約法第5条には、使用者に対する「安全配慮義務」が定められているからだ。

出典:マレーシア航空撃墜事件を機に考える。会社員は危険地域への出張を拒否することができるのか。

やはり雇用契約書など文面に書かれている場合は、拒否できないのが一般的と考えられます。しかし労働契約法第5条を盾に拒否することが出来る場合もあります。

(労働者の安全への配慮)
第五条  使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

出典:総務省行政管理局 電子政府の総合窓口

労働契約法5条に生命や身の安全を確保できるよう配慮する事が書かれています。何が起こるか分からないような危険な地域への出張派遣は出来ないのです。ボディーガードや現地のサポートがあると言われた場合は、会社側と根気強く交渉する必要があります。

安全な国だから大丈夫、と会社が言い切ってきた場合

安全という定義は人によって異なります。1年に1人しか犠牲になっていないとか、デモは多いけど日本人で被害に合った人はいない、などと無理やり理由を押し付けてくる場合もあります。しかしバングラデシュの日本人大量襲撃事件などのように、いつどこでどんな被害に合うかわかりません(バングラディッシュはデモは多いが外国人は危害を加えられる可能性は限りなく少ないと一般的に言われていた)。

日本にいても同じ事が言える、という方もいますが日本語が通じて土地も比較的分かりやすく、危険度は数十倍、いや数百倍違ってくるのではないでしょうか。助けを求めるにしても、まだ状況判断がつく場合もあります。

比較的治安が微妙な国の場合、治安以外で何か方法は無いのでしょうか。

そういう時は、育児介護休業法が役に立ちます。「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」として明記されています。

(労働者の配置に関する配慮)
第二十六条  事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

出典:総務省行政管理局 電子政府の総合窓口

これは子供の養育や家族の介護が必要なため、企業側が海外への出張に対して配慮しなければならないということです。私以外に世話をする方がいないため、日本を離れることが出来ないというものです。これは、国内の出張や転勤に関しても当てはまります。

本当に子供や介護等があり、それでも企業側が命令してくるならば法令違反になります。通常は子供や親を蔑ろにしてでも行ってこい、などとは言うはずがありません。そのような会社ならば今後もそういったトラブルが想定されるので、転職を考えましょう。

海外出張を断るまとめ

就業規則に書かれていれば行かなければならないが、書かれていなければ治安の悪化や育児・介護を理由に断りましょう。しかし高いお金を払って海外にというのは、会社に仕事が出来る人間だと認めてもらっている証拠でもあります。そして海外で活動する人間がいないと、ここまで日本は豊かな国になっていません。若いうちは社会勉強にもなりますし、やる気があり会社が大いにバックアップしてくれるならば考えても良いでしょう。

人生で1度は海外に行くべきですが、海外に行かないで素晴らしい仕事をしている方もたくさんいます。海外にせよ国内にせよどうせ仕事をするなら、やりがいがあり自分が頑張れる仕事に打ち込みたいものです。