基本的に正社員は、期間の定め無しとされている場合がほとんどです。つまり、いつ仕事に終わりが来るか、労働が終了するかは誰にも分からないのです。ではずっと終身雇用しなければいけないのでしょうか、また安心して会社に身を委ねて良いのでしょうか。働き方が変わりつつある現在、長く働けるかは神のみぞ知るのでしょうか。
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正社員の解雇を見る前に他の雇用形態も考える
正社員の解雇を考える場合、まずは他の雇用形態との差を把握する必要が出てくる。なぜ正社員は有利なのか、それ以外の雇用形態が増えているのか、企業の思惑と従業員の理想と現実を紐解く必要が出てくる。
日本の雇用形態にはいくつか種類があります。昔であれば考えられなかったような形態も出てきて、企業にとって使いやすいありかたになっています。
正社員について
期間の定めが無い雇用形態で、新卒で入る場合や中途採用で雇用されるケース。基本的には1度正社員に就くと、こちらから申し出ない限りは安泰というのが世の中の見解だろう。しかし中には、自己都合で辞めてもらおうとパワハラ・モラハラ・マタハラなども横行し、事実上辞めさせられざるを得ないケースもある。
相当の理由が無い限り解雇は認められず、仕事の不出来や性格の合わなさなどは論外で、客観的に第3者が見て誰しも納得できるような内容で無い限り、解雇は難しい。
工場や営業所が閉鎖になったとしても、基本的に経営者側は解雇ではなく転勤や配置転換などで雇用を継続しなければいけない。なぜここまで優遇されているかと言うと、責任が大きいからだ。1人当たりの仕事の負担も大きく、裁量もあり給与に反映される。正社員になれば、東京勤務の場合「来月から北海道へ転勤ね」と言われてもまず断れない。他の雇用形態では、このような転勤はありえないだろう。
契約社員について
正社員の「期間の定めが有る」雇用形態がこちらの契約社員です。アルバイトやパートよりは正社員に近く、責任も出てきます。働く内容は正社員と同じもしくは同等の内容になることが多く、給与もある程度出てきます。しかし期間の定めが有るため、次の雇用を延長してもらえるかなど、不安な部分が多いです。
もちろん契約社員から正社員にステップアップ出来る企業もあります。しかし契約社員で止めておいたほうが企業にとっては資金面でお得なことが多く、よっぽど人材不足で無い限りは中々正社員になりにくい現状があります。
しかし、新卒で正社員の場合はグループ面接やSPIと言われる常識問題や時事問題など、社員面接や社長面接と多くの課題を突破した正社員と比較すると、契約社員は書類選考と面接だけという課題が少ない採用方法になります。つまり正社員よりは「比較的」採用されやすいのです。
書類選考と面接ですぐに正社員として採用すると、既に正社員になっている方から不満が出てきます。その為、一度契約社員にして働きぶりを見てから正社員へというのが企業側の考え方です。
働く側としても、ステップアップ出来るかもしれないチャンスなので、応募する方も増えます。正社員にステップアップするための明確な規定がある、例えば試験を突破したり資格を取得したり、チャンスがある会社なら契約社員から目指すのもアリでしょう。しかし実際は契約期間満了の為、といって切られる場合もあり解雇させやすいというのが現状です。
派遣社員について
雇用の期間の定めが有る雇用形態です。1年なら1年、半年なら半年と明確な区切りがあり、時給制がほとんどです。時給は派遣会社を通しているので比較的高く設定されています。ピンポイントで、何かに特化した方を雇いたい会社にしては便利な雇用形態と言えます。
子供がいるから、親の面倒を見ながら決まった時間だけ、半年間だけ働きたいなどある程度事情がある場合で、能力があれば派遣社員もありでしょう。しかし実際のところは、派遣でないと採用されにくかったり、年齢的に採用が厳しく派遣にせざるを得ない労働者も増えています。
確かに派遣でも正社員以上に稼いでいる方も存在します。しかしそれは一部の能力が高い人限定で、例えば3ヶ国語の翻訳ができるなど、ほとんどの方は当てはまらないでしょう。
派遣の場合は、次の更新で切られても文句をいう事ができず、次の雇用先が決まっているような計画性が無ければ不安定と言われる雇用形態と言うのも納得が出来ます。企業にとって切りやすい、働き続けたい労働者には厳しい雇用形態でしょう。
アルバイト・パートについて
雇用期間の定めの有る雇用形態です。時給で支払われる場合が多く、働く時間によっては雇用保険のみで国民健康保険や国民年金は自分で払わなければいけない、という可能性も十分あります。
しかし責任があまり無く、従業員もある程度身構えせずに働くことも出来ます。しかし最近ではアルバイトでも社員クラスと同等のレベルが求められるところもあり、薄給の割に激務として募集しても集まらない一部仕事も増えています。特にサービス業や飲食関連など、ブラックバイトとしてニュースになることも多いです。
企業にとっては期間満了で解雇しやすいですが、長く働いて生計を立てたい方には苦しい働き方でしょう。しかし非正規雇用も多い現在、40歳、50歳でアルバイトという方もかなり多いのが現状で、正社員や契約社員に中々ステップアップしにくい環境がそこにはあります。
正社員でもクビにしやすい世の中に?
では正社員はクビを切られにくいのか、オリックス元会長の発言が話題になった。
働かない正社員の雇用を打ち切れるようにすべきだ――。オリックス元会長の宮内義彦氏(現シニア・チェアマン)の発言が、ネット上で話題になっている。
宮内氏は「正規雇用は一度採用されたらクビにならない。たとえ生産性が下がっても企業は解雇できない」と指摘する。「だから非正規で雇用調整せざるをえなくなり、非正規はいつ契約が終わるかとびくびくしながら働かざるをえない。これは不公平だ」と持論を展開した。
出典:「働かない正社員」をクビにできる世の中に――オリックス元会長の意見をどう見る?
正社員はよほどの事が無い限り、クビを切られない、働かない社員は打ち切れるようになれば、とのこと。確かに企業からすれば至極全うな意見だろう。安い賃金のアルバイトやパートよりもサボっていたり、仕事をしない社員はいても周りの士気を下げ、費用対効果が悪い。
しかし採用したほうにも問題がある。そのような社員だと長い採用期間で見極められなかったのも原因だ、そして部下が働かないのは上司が管理・指導していないのも原因だろう。普通の社員ならやりがいがあり、尊敬できる上司や頼りになる仲間がいれば、頑張って働こうと思うものだ。社員にも問題があるが、会社側にも問題があるという事だ。
正社員を解雇しやすくすると、もはや雇用は崩壊する?
では正社員を解雇しやすくする社会になれば、安心して働ける世の中になるのだろうか。そうは思わない、少しでも安定や給与を求めて契約社員・派遣社員・アルバイト・パートから正社員を目指して頑張る人たちもいる。そういう人たちの希望も全て取り払われる世の中になる可能性もある。
働かない人を解雇ではなく、気に入らない人間を解雇する、そのようになりかねない。
竹中氏は、労働省が実施した派遣に対する調査を例に上げ、正社員に変わりたい人と非正規のままでいいという人では、非正規のままでいいという人の方が多い、という調査結果を紹介した。
出典:竹中平蔵氏が非正規雇用について熱弁「正社員をなくしましょう」
正社員になりたくないという方が多いとのことだが、果たして本当だろうか。ある程度の働き甲斐の有る年齢なら少しでも安定している「正社員」を希望するのが家庭を守る方針になりそうだが。
実はこの竹中平蔵氏は「パソナグループ取締役会長」という立場にいる。つまり派遣会社大手の人間だ。確かにこの人の言う事も一理ある、世の中が正社員だらけになるとどこかの国のように資金が無くなり、崩壊しかねない。
しかし無くすというのはいささか大袈裟ではないか。本当に派遣のままで良いと言う方は派遣で働き続け、正社員になりたいという人には道を開いてあげるべきだ。
最近では解雇をめぐって、労働基準法や労働契約法、法的措置などのキーワードがよくでてきます。訴えてまで会社に残りたいという人もいれば、そんな会社こちらから蹴ってやるという方もいます。辞めさすのではなく、社長や責任者・上司が部下をきちんと監督し、指導する。会社と従業員双方が良いほうに向かうように、努力するのが大事なのではないでしょうか。