海外株やETFの積立、実際に使う人が「かなり少ない」理由とは何か?

私は海外ETFを定期的に購入して資産運用していますが、基本的な購入方法は「自動積立」ではなくいわゆる「手動積立」での買い付けです。しかしSBI証券から2018年3月より「米国株式/米国ETF定期買付サービス」が開始されました。これは面白いと感じたものの、実際使う人がほとんどいないのでは?と疑問に感じました。


現在の海外ETFの購入方法について

日本の投資信託は毎月一定額を定期的に購入する、という積立サービスが盛んです。これは投資対象が国内・海外問わず多くの銘柄が扱われています。例えば海外の銘柄に分散して投資したいと思えば、下記のような投資信託を購入すればよいわけです。

<購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド

2018年2月現在で65.8%がアメリカの株式で構成されていますが、他の国々も入れられており業種別に分散投資されていて人気です。これを証券会社で購入すると、例えばこのような手数料がかかります。

「購入手数料」無し 「運用管理費用」0.20412% 「信託財産留保額」無し

買う時も売るときもお金はかからないけど、年間約0.2%だけ手数料をもらうよ、という意味です。NISA・つみたてNISAや、一般口座・特定口座で毎月積立する場合でも考えは同じです。

では海外ETFを購入する場合はどうでしょうか。例えば海外ETFで下記のようなブラックロックのETFがあります。

iシェアーズ S&P 500 ETF(IVV)

これもアメリカの大型株だけですが、分散投資が効いていて人気があります。これを証券会社で購入すると下記のような手数料がかかります。

「購入手数料」0.45%(5-20ドル) 「運用管理費用」0.04% 「売却手数料」0.45%(5-20ドル)

買う時も売るときも約0.45%の手数料がかかります。国内の商品ではないので手数料が高額です。しかし維持をする為の運用管理費用は、さすがアメリカで激安です。

国内と海外どっちが手数料が安い?

例えば国内の例で言うと「<購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド」でかかる手数料は年間の「約0.2%」だけです。ざっくり計算すると10万円分だと年間で200円、100万円分で2,000円かかります。

海外の「iシェアーズ S&P 500 ETF(IVV)」の場合は、10万円分で購入時に最低5ドルなので1ドル110円で計算すると550円、売却時にも同じだけかかります。しかし年間の手数料は10万円分で40円、100万円分で400円です。

名称 購入金額 購入手数料 運用管理費用 売却手数料
ニッセイ 外国株式インデックスファンド 100,000 0 200 0
ニッセイ 外国株式インデックスファンド 1,000,000 0 2,000 0
iシェアーズ S&P 500 ETF(IVV) 100,000 550 40 550
iシェアーズ S&P 500 ETF(IVV) 1,000,000 2,000 400 2,000

1回購入して1年運用して売却したコストを計算してみると、どうみても海外ETFの方がコストがかかります。では1回購入して10年運用する場合はどうなるのでしょうか。

名称 購入金額 購入手数料 運用管理費用 売却手数料
ニッセイ 外国株式インデックスファンド 100,000 0 2,000 0
ニッセイ 外国株式インデックスファンド 1,000,000 0 20,000 0
iシェアーズ S&P 500 ETF(IVV) 100,000 550 400 550
iシェアーズ S&P 500 ETF(IVV) 1,000,000 2,000 4,000 2,000

1回購入して10年運用して売却したコストです。運用管理費用は毎年のコストを商品から引かず、分かりやすいように10倍掛けただけの単純計算にしています。

このことから長期間運用では最終的に海外ETFに軍配が上がります(コストの大小で多少変化する)。海外ETFを購入する時は、両替手数料の高い「円貨決済」よりは、円からドルへ両替して「外貨決済」する必要が出てきます。その場合でも1ドル当たり4銭~25銭ですので、1,000ドルでは40円~250円となりそこまで神経質になる必要がないコストと言えます。

積立にすると話が変わってくる、海外ETFの積立は圧倒的に損

では1年に「1回」ではなく「毎月」つまり1年で12回購入するとどうなるのでしょうか。

「iシェアーズ S&P 500 ETF(IVV)」10万円分を毎月1回の年12回(合計120万円)購入すると、1回当たり550円×12=6,600円かかります。120万円を一括で購入すると限度額の2,000円で済みます。

10万円で0.55%120万円一括で0.16%の年間コストがかかった計算です。ただし毎月10万円積立は現実的ではないので毎月1万円にすると、手数料が現実的ではなくなります。

1万円分の海外ETF購入で手数料は550円、5.5%というタコ足の毎月分配型投信でも今時みかけないような購入手数料になります。つまり海外ETF(海外株式も)は積立投資には向いていないのです。

海外ETFで積立投資は誰がやるのか?

では何の為にSBI証券はこのサービスを作ったのでしょうか。毎月何十万も積立できる「富裕層」向けなのでしょうか。実はこれは「NISA」を使っている方向けに適したサービスなのです。

NISAの場合はSBI証券では買付手数料は無料なので、毎月1万円でもいわゆる手数料負けすることはありません。海外の株式やETFを購入するのは、住信SBIネット銀行にお金を移動して両替して戻したりと、非常に面倒です。日々の生活でメインで使っている口座が住信SBIネット銀行ならば良いですが、金融機関はごまんとあるのでそんな方は少ないでしょう。これはSBI証券のみで「円貨決済」するか、住信SBIネット銀行からドルを持ってきたものを「外貨決済」するか、どちらからしか現在は積立を行うことが出来ません。

海外の株やETFといっても、米国・中国・韓国・ロシア・ベトナム・インドネシア・シンガポール・タイ・マレーシアと様々な国があります。「NISA」でそれらの国の「海外ETF」「海外株式」を購入していて、毎月手動で積み立てるのが面倒だからNISAの期間中だけでも自動積み立てがしたい!という方に向いているサービスだと言えます。

ちなみに注意点として「米国株式・ETF定期買付サービス」は総合口座(特定口座・一般口座・NISA)は問題ありません、ジュニアNISA口座も大丈夫です。しかし「つみたてNISA」は対象外となっているため、NISAから変更している方は利用できないので注意が必要です。