2017年は有効求人倍率が43年振りに高い水準になったので、2018年に補助金が無くなると言われています。しかし有効求人倍率とは「正社員」だけの数字ではなく、契約社員やアルバイトにパートといった「非正規」も含まれています。雇用が改善したのではなく、賃金が安い求人が増えた(雇うとは言っていない)という言い方が正しいのです。
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正社員の有効求人倍率はやっと1倍
有効求人倍率が「1.0倍」と聞くと景気が良く求人が増えたと感じますか?求職者1人につき1つ仕事があるというだけで、希望の仕事に就くのは「1.0倍」では難しい数です。
2017年10月時点でのハローワークにおける有効求人倍率は「1.55倍」となりましたが、正社員の有効求人倍率は「1.03倍」とやっと1倍を超えた高くない数値です。
2017年10月:全求人1.55倍 正社員1.03倍
2016年10月:全求人1.40倍 正社員0.89倍
厚生労働省資料:一般職業紹介状況(平成29年10月分) / 一般職業紹介状況(平成28年10月分)
国が景気が良くなってきたという現在で正社員の求人数は「普通」になったのです。しかしその普通の求人数も、なにやら厄介な求人で溢れかえっています。
以前とは全く異なる給料体系になってしまった仕事
特に最近では昔は無かった求人、残業時間が50時間分込みになっている求人や、予め提示された給料20万円(40時間の残業手当含む)といった給料体系を取る会社が増えてきました。
「未経験で田舎で25万円か、結構もらえるね」とよく見てみると「残業手当70時間含む」と書かれているようなキツイ求人もあります。これを計算してみると、基本給はアルバイト・パートと同じくらいで「実は最低時給で働かされている」という正社員求人も珍しくないのです。
あわせて求人には介護や営業、警備に飲食やサービス業といった3k(きつい、危険、きたない)の仕事が多くあります。現場ではミスマッチが多数発生しており、特に40歳を越えると面接はおろか、書類選考すら通らない状況も増えています。
雇用促進税制という特例措置について
現在日本では「雇用促進税制」という制度が敷かれています。これは従業員を1人増やしたら法人税が安くなる特例の措置です。額は1人に付き40万円で、2018年以降に廃止が囁かれています。
詳しく知りたい方は厚生労働省を参考にしてもらいたいのですが、おおまかに言うと下記の通りです。
・適用年度に5人以上(中小企業は2人以上)かつ10%以上従業員を増加させる
・青色申告提出している企業
・適用年度と前年に事業主による解雇が無いこと
・これとは別の「地域雇用開発促進法」に規定されている地域に入っている事
この1番下の地域では東京都・大阪府は入っていないので対象外となります。要するに都市部ではなく、地方の政策という事です。
参考:同意雇用開発促進地域一覧
2015年度の利用実績が4,455件とのことですが、実際にきちんと雇用されているかどうかは怪しいものです。なぜなら補助金を狙った偽装の雇用が昔から問題になっているからです。雇用されたとしてもすぐに解雇されたり、特に悲惨なのは「トライアル雇用」という比較的クビを切りやすい制度も不安定な雇用を後押ししています。
ブラック企業の求人が増えている
人が足りないという事は、現在の従業員の負担が増す事に繋がります。そうすると負のスパイラルが起こり、更に従業員は辞めてしまいます。そうすることでブラックな職場が出来上がり、結局は雇っては辞め雇っては辞めの繰り返しになっています。
仕事がたくさん増えたとしても、長く腰を据えて働けずにすぐに辞めなければいけない仕事では意味はありません。会社のほとんどがアルバイト・パートで占められている企業もあるくらいで、補助金を無くすのではなく正社員に特化した補助金制度を設けるべきです。
職場は若い人しか求めず、給料は上がらない
求人票を見ていると「20代が活躍する職場」や「若い人がいきいきと」というように30代・40代と年齢が上がるに連れて人生経験は豊富にもかかわらず、応募できない門前払いされる企業が増えています。
中高年の失業も問題になっており、給料もここ10年20年の水準は変わっていないにもかかわらず物価・税金は上がっています。現在はブラックでない職場も今後ブラックと化する可能性もあり、これを政府の実績と言われると納得できるものではないのです。