東証二部から東証一部へ変更する会社もあれば、東証一部から東証二部へ降格する会社もあります。しかし東証一部の条件を満たせるにもかかわらず、あえて東証二部のままという会社も存在します。なぜ昇格せずに現状を維持するのでしょうか。
目次
東証一部と東証二部の条件とは
東証一部と聞けば「大企業なんだな」とイメージする方も多いですが、一部と二部では上場するための「審査基準」が異なります。これは実にシンプルな基準となっており、非常に分かりやすい違いです。
【東証一部の上場条件】
株主数が「2,200人」以上
流通株式数が「2万単位」以上で上場株券等の「35%」以上
【東証二部の上場条件】
株主数が「800人」以上
流通株式数が「4,000単位」以上で上場株券等の「30%」以上
そして流通株式時価総額が「10億円」以上
この違いだけで他の条件は同じです。ということは、どちらの条件も満たしている企業が存在するということです。それにも関わらず「東証一部」ではなく「東証二部」のままの企業はどこでしょうか。
東証一部へ昇格(指定替え)できるのにしない企業はどこだ
力はあるのに東証二部のまま、そんな会社として「象印マホービン」があります。炊飯ジャーや調理用のホームベーカリーにミキサーといった調理用機器が多く、昔からある電気ポットやマホービンを扱っている会社です。特に料理が好きな方ならお世話になる方が多く、知名度は抜群です。
こちらも料理で有名な会社で「エスビー食品」です。とろけるカレー・ゴールデンカレー・濃いシチューといった「カレールー」や「レトルト食品」が有名です。
力があるのに目指さないのは「現状に満足」していたり、まだそこまでの力は・・・といって謙遜している部分があるのでしょうが、明確な理由については後述します。
それとは逆に一部を目指した企業もあります。同じ食品系の「井村屋」です。あずきバーや肉まんで有名な会社で、設備投資目的に充てるために東証二部から東証一部へと「指定替え」したと話題になりました。
東証二部のまま維持するメリットとは何か
東証一部へ上場すればブランド力や信用も上がりますし、資金を調達しやすくなります。しかしそれだけ注目が上がると良いことばかりではありません。ハゲタカと呼ばれる○○ファンドといったような外資系に狙われる可能性もあります。株主が増えると株主総会等で株主からの意見や圧が増えていきます。
アメリカのように儲かっているなら「株主に還元しろ!」という意見も多く、東証二部でいることは目立たずにある程度オーナー一族で自由に伸び伸びと会社経営が出来る、といったメリットがあるのです。上場しないよりはしたほうがいいが、かといって東証一部までは・・・といったちょうど良いのが東証二部なのです。
逆に東証一部から東証二部へ降格するとどうなるのか?
日本を代表する家電メーカーの「東芝」が東証一部から東証二部へ降格しましたが、イメージが最悪です。通常は東証一部から二部と聞くと、今後の資金調達が不利になりそうですが時価総額は多いので、東芝の場合はあまり関係はありません。
日経平均と連動している投資信託のファンドは多く、東証二部になると投資家が離れる可能性が出てきます。東証は一部しか取引の対象としない、となるとそういった投資家の「買い」が減ります。つまりそこからの資金が入ってこなくなるのです。海外の投資家からも見放され、既存の株主からの信用も無くし何も良い事がありません。
海外からの資金が入り海外へ事業を売却し、もはや日本の会社では無くなってきているとさえ言われています。自業自得と言えばそれまでですが、ではそもそも前述した「象印マホービン」「エスビー食品」のように、最初から二部にいて一部を目指さなければ良かったかというと、そうでもないでしょう。規模があまりにも大きすぎて「どうして?」と逆に不審がられるからです。会社によって目指すべき経営、目指さなければいけない経営は、全く異なるのです。