完全歩合制の仕事は「違法」だから絶対に働いてはいけない

あなたは「歩合制」と聞くと、どんなイメージを持ちますか。私は営業で件数を取ってきた分だけ、給料にプラスアルファとして「特別にもらえるお金」をイメージします。要するに自分の努力次第で成果報酬という形で、たくさん稼げるというものなんですが「完全」と付いている会社では仕事をしてはいけません。


分かりやすい「歩合制」の例を確認する

例えば自社の商品を販売する営業マンがいたとします。基本給として15万がもらえるのですが、正社員でこれは少ないと感じますよね。しかしここで「歩合制」という制度が力を発揮します。

1件商談を成立する毎に「3万円」の報酬が発生するとします。この営業マンは1ヶ月に「5件」商談を成立させました。そうすると3万円×5件で15万円の特別報酬がもらえ、基本給の15万円+特別報酬の15万円で1ヶ月の給料は「30万円」となるわけです。更に2倍の「10件」を成立させた場合は、+30万円で1ヶ月の給料は45万円となります。15万円と45万円では生活レベルにかなりの差が出ます。

この魅力は結果を出せば必ず給料に反映される、ということです。しかし逆に考えると結果を出さなければ、基本給の15万円以外はもらえないので「実力」が問われます。

「完全歩合制」とはどういう事か?

歩合制の仕組みは分かりましたが「完全」とはどういう意味なのでしょうか。これは基本給が存在せずに、件数がそのまま全て給料に反映されて「基本給が保証されていない」ということです。フルコミッションとも言われ、成果に応じた賃金以外は一切支払われないのです。

実は正社員・契約社員・アルバイト・パート・派遣社員問わず会社に雇用されている場合、「完全歩合制は違法」です。その根拠として労働基準法を確認してみましょう。

(出来高払制の保障給)
第二十七条 出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。

出典:労働基準法 電子政府の総合窓口e-Gov

総務省行政管理局が運営しているサイトで、上記の労働基準法第二十七条に反しているからです。出来高制度を採用していても、働いた時間に応じて賃金の保障をする必要があるということです。

例えば1ヶ月に180時間働いたが成約件数は0件でした、しかし180時間分「働いた」という事実は揺るぎませんのでこの分の給料が支払われる必要があります。都道府県内の最低時給が900円だった場合、162,000円の給料が発生します。

経営状態が悪化すると歩合制を強要される?

歩合制が多い仕事としては「保険」「不動産」「タクシーの運転手」「エステ」といった営業職がほとんどです。しかしCMでやっているような企業でも、フランチャイズ契約で実際は従業員数人といった不動産会社もあります。経営状態が悪化してくれば、中には難癖を付けて辞めさせるように圧力をかけたりする会社があります。

適当な理由を付けて基本給を下げたり、完全歩合制に近いような報酬形態を取ってくる場合があります。その場合は労働局に相談しなければいけません。

ただし契約には注意が必要です、完全歩合制でも問題が無い働き方というのも実は存在するからです。

完全歩合制でも違法にならない働き方とは

「フリーランス」「自営業」という仕事の場合、「業務委託契約」を結ぶことで労働基準法第二十七条から外れることが出来るのです。業務委託契約には「請負契約」と「委任契約」が存在します。前者は成果をあげることで報酬を受け取るタイプで、後者は行為を行うことで報酬を受け取るタイプです。

ここで注意しなければいけないのが前者で、成果をあげて報酬を受け取るという事は「成果があがらなければ報酬は発生しない」という事です。つまりこれは「完全歩合制」なのです。

会社で働いているわけではないので、労働基準法には当てはまらないので注意が必要ですが会社で仕事をしていて途中で契約を変更し、いつのまにか「請負」契約させられていたという事のないように注意してください。歩合制は魅力も多いですが、力が無ければ報酬が少なくなる恐れのある働き方です。自分にあった働き方、雇用条件は何かという事を、就職・転職活動時に予め決めておきましょう。