東京で待機児童が問題になっていますが、全国的にはさほど問題となっていないのがこの待機児童問題。どういう事かというと、例えば食料が少ない地域に人々が殺到し「私の分が無い!」と言ってるのと同じで、食料が多い地域では逆に捨てているという事態と考えは同じなのです。では地方へ行って子育てをすればよいのかというと、そんな簡単な問題ではありませんでした。
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全国の8割以上の自治体は待機児童なんて問題にしていない?
東京では総理が幼稚園や保育園の無償化や、保育の受け皿を整備すると訴えているのが話題になっていますが、そもそもほとんどの自治体はこれを冷静な目で見ているのが現状です。
元大阪府知事・元大阪市長の橋下徹氏がこんな事を言っていたのが目に留まりました。
「実は全国の8割の自治体は待機児童ゼロ。待機児童の72%は首都圏と大阪だけ。その大阪には43市町村あるが、多くは待機児童ゼロ。だから国会で話すことではないし、総理大臣が待機児童ゼロなんて掲げる問題ではない。国会議員の皆さんが選挙対策か何かで食いついちゃっているが、首都圏と近畿圏の一部の都市に全責任を負わせてやらせればいい。こんなのすぐにできる」
出典:橋下氏「僕が都知事になったら一か月で待機児童をなくせる」Abema TIMES
子供が減っているのだから待機児童が減るのは当然です。しかし待機児童は年々問題になっています、おかしいですよね。これを考えるにはもう少しデータを見ていく必要があります。
子供は猛烈な勢いで減り、保育所が猛烈な勢いで増えている
子供が減って保育所が増えるという一見矛盾しているように見えるこの問題、子供が年々減っているのなら「保育施設」も年々減っていくのが当然の流れでしょう。厚生労働省が発表したデータによると、平成27年・平成28年・平成29年の保育所等の施設は年々増えています。
平成27年に28,783カ所だったのが平成29年には32,793カ所へと増えました。それにも関わらず平成30年になっても問題になっています。どうしてでしょうか、これは冒頭でも述べた食料が多い地域ではなく、少ない地域に人が殺到したため起こっていると言えます。
東京都や都市部で全国の50%を占めている
厚生労働省の保育所等関連状況取りまとめ(平成29年4月1日)資料によると、保育所等定員は274万人、利用者数は255万人と「約20万人の定員割れ」を起こしています。待機児童数は約26,081人で前年比2,528人増えています。これだけを聞くとおかしな話です、20万人の定員割れで「施設に入れない」というのです。
都市部の待機児童として、首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)、近畿圏(京都・大阪・兵庫)の7都府県(指定都市・中核市含む)とその他の指定都市・中核市の合計は18,799人(前年より1,298人増)で、全待機児童の72.1%(前年から2.2ポイント減)を占める
この厚生労働省の資料には更に上記のように、都市部の待機児童は72%と書かれています。首都圏と都市部というニュアンスに違いはありますが、橋本氏の言う大きな都市に偏ってるのは間違いありません。もちろん1位は東京都で26,081人中で8,586人とダントツですが、沖縄県も2247人と増えています。そして千葉県の1,787、兵庫県の1572人と続きます。
最近では東京以外の大阪や名古屋といった地域でも高層マンション、タワーマンションが増えており、狭いビジネス街で子育てをしようという方も増えています。しかし1,000人を超えているのが47都道府県中8都道府県と、やはり偏っているのが現状です。
幼稚園のほとんどが定員割れという衝撃の事実
少し前のデータですが、NHKによると公立幼稚園の94.2%、私立幼稚園の79.4%が定員割れを起こしているという衝撃の事実が分かっています。
しかし都市部では競争が激化しているそうで、いわゆるパイの奪い合いとなっています。幼稚園ではなく保育所に預ける親が増えているのは、昔に比べて共働きの働く親が増えたことが原因です。つまり幼稚園に預けたくても保育所に預けなければいけない現状なのです。地方では幼稚園や保育所で子供が少なくて廃業なども起こっています。
待機児童が嫌なら都市部へ行くな?
日本では児童が減少しています、それにも関わらず待機児童が増えているのは都市部へ人口があまりにも集中しすぎているという事が原因として大きいのは事実です。受け入れが可能な人数は限られています。どうしてあえてそこを選んで引っ越して子供を産んで育てるのか、地方からすれば誰もがそう思います。地方で空いている保育所は山のようにあります。
公務員なら問題ありませんが、ほとんどの方には厳しい現実が待っています。途中で会社が倒産したり、辞めたりすると30歳を超えると極端に選択が狭まり40歳を超えると見向きもされません。しかし都会では仕事はあり、選ばなければ何とかなります。
つまり地方創生が上手くいっていないから都市部に人が流出しているのです。田舎や地方で子供を育てたくても、親が資産家や裕福な家業をやっていたり、長い目で見て需要のある息の長い会社に就職する等、お金に余裕がなければ都会へ出て行ってしまうのです。
狭い都市部で保育園は問題山積み
都市部へ行くと人が多くなるので、様々な問題が起こります。例えば保育士が足りないと言って募集しても「男性保育士は嫌だ」といってクレームを入れる方がいます。では男性を雇わなければどうなるのでしょうか、約半分の求職者を採用時に断ることになります。人手不足なのに困ったものです。
保育スペースは限られているのに、都市部に集中したばかりか利便性の良い保育施設に入ろうとする方が増えています。少し遠くなれば空いているにもかかわらず、駅が近い、利便性の良いところばかり求めて殺到し「落ちた!落とされた!」と言うのもいかがなものでしょうか。多少は不便でもある程度は我慢して申し込む事を考えるべきでしょう。
病気や事故で子供に対する責任も、保育所では求められています。子供が好きという理由で、万が一何かあった時に保育士に「どう責任を取るのか!」と親に詰め寄られる、そんな不安もあり働くのを躊躇する保育士が多いのも頷けます。これに限らずいわゆるモンスターといわれる親も増えています、給料だけが問題になっているのでしょうか。
幼稚園は保育所に比べて認可条件が厳しく、施設なども整っています。せめて幼稚園から保育所の転換が出来れば、この問題の解決も前進するのですが利権が絡んだり中々難しいのが残念なところ。
仕事は無いが地方へ行ってお金や生活に不安を抱えながら子育てをするか、都会で仕事をしながら激戦区で疲弊して子育てをするか、どちらが良いとは一概に言えませんが、それぞれに合った生き方を見つけるしかないのが現状です。