高齢になっても免許返納が出来ない理由は1つだけ

自動車の事故やトラブルは数多く存在しますが、お年寄りの事故が増えています。自動車免許は一般的に18歳から取れますが、上限はありません。つまり100歳でも120歳でも免許を保持しておくことも運転することも出来るのです。しかし判断能力が鈍ってきたり、認知症などで免許の返納が話題になることがあります。少しずつ増えてきてはいますが、中々進まない返納、原因は1つしかありません。


身近にいる高齢者の自動車運転

私の身近にも運転している高齢者がいました、現役時代は自動車関連会社に勤めており車には比較的詳しく、運転も好きでした。ぶつけたこともあり、少し運転は荒いといったレベルで免許の返納はしませんでした。

70歳を過ぎた辺りから、急発進急ブレーキが目立つようになりました。一緒に乗る人は乗っていて怖いというようになり、不安が出てきました。知人に会いに行くときも自動車、買い物に行くときも自動車、孫に会いに行くときも自動車と地方ではごく普通の自動車の使い方をしています。

80歳近くになったとき、単独事故を起こしました。自損で怪我をしたのは壁と自分と車でした。その道路は特に何も無い、少し狭いだけの直線道路でしたが運転技術が衰えていたのです。

自分で免許の返納は行わなかったのですが、家族の猛反対を理由に免許の返納手続きをしました。

免許を返納する人は増えている

最近では事故が増えたほかに、身分証明書の代わりとして使える「経歴証明書」の魅力が増えたので返納する方も徐々に増えてきました。しかしこれは都会に限った話だという方もいます。

自主的に運転免許証を返納する65歳以上の高齢者が昨年、埼玉県内で初めて1万人を超えた。返納者に交付される「運転経歴証明書」の有効期限がなくなるなど、免許を手放すデメリットが解消されたことが最大の要因だ。

出典:運転免許自主返納が大幅増 代替「経歴証明書」の魅力アップで 産経ニュース

東京や大阪など都市部であれば免許が無くても困らない、朝の電車を見ると高齢者が大きな荷物を背負って皆で遊びに出かける姿を良く見かけます。しかし地方に行くとどうでしょうか、電車も通っていなければバスもありません。バスは昔は20分に1本あったのが、今では1時間に1本もありません。

若者の車離れが叫ばれていますが、若者はほとんど車に乗っており、歩いている方はほとんどいません。道路は土日などは特に渋滞していますが、タクシーはあまり見かけず、お年寄りの交通手段として近くにあるのは自転車があるだけ、つまり次は自転車事故が増えることも容易に想像できます。

自転車を運転しているお年寄りを見かけると、右にフラフラ、左にフラフラ、犬の散歩をしている方にぶつかりそうになっています。別にこれはド田舎の話をしているのではありません。自転車や電車を駆使して1時間少しで大都会までいける距離の地域です。

免許返納できない理由は、物の調達が出来ないから

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自動車免許を返納しない理由は、物の調達が出来ないためです。買い物にいくのも車で、ホームセンターに行くのも車、さて車が無くなったら行けません。もちろん近くに子供が住んでいれば頼むことも出来ますが、少子高齢化や若者は都会を目指すこともあり、いないことが数多くあります。

夏の暑い日に、冬の寒い日にお年寄り1人で片道30分も40分も歩いて買い物に行ってもらうしかありません。そんなのずっと続くのでしょうか、続くはずがありません。都市部の場合は、百貨店が送料無料で持ってきてくれたり、バスや電車が割引になったりとサービスが拡大していますが、少し地方になるとそういうサービスはありません。

インターネットが使えればネットスーパーも便利ですが、80歳が買い物カゴに入れて、クレジットカード番号を入力して、時間帯指定して、とても出来ないでしょう。

「近所に80代のおじいさんが住んでいますが、離れて暮らす息子さんが運転を心配するあまり、昨年の正月におじいさんの車を勝手に売却して免許も返納させたんです。すると活発だったおじいさんの元気が急になくなり、1年も経たないうちに寝たきりになりました。ある年代の人には免許を持っていることがステイタスのようで、おじいさんは病床で免許を返納したことでもらった運転経歴証明書を名残惜しそうに眺めているそうです。息子さんの心配もわかりますが、年寄りに無理強いするのはよくないですね」

出典:事故を懸念した認知症高齢者の運転免許返納 裏目にでることも

自動車があればどこにでもいける、若い子がはじめて免許を取ったときにはこう思った方が多いでしょう。逆にいうと足腰が弱くなると免許が無ければ、どこにも行けないという事になります。

積極的な方ならまだしも、そうでないかたも多く地域のコミュニティーも希薄になっています。自動車を奪われれば一気に衰えるという事も十二分に考えられます。

私の親が住んでいる地域も地方ですが、スーパーは多いほうです。しかしほとんどが車で買い物に行くことを想定しており、自転車で買い物にいけるスーパーは潰れそうな大手に押されている小さい地元スーパーしかありません。どう考えても、食料が調達できないのです。最悪の場合は、宅配で高いお弁当を頼んだり、施設に入って食べさせてもらったりとお金のかかる手段を取っていくしかありません。年金額がある程度ある今の世代ならまだしも、年金額が減っていきこれからの世代も同じように通用するのでしょうか。そう考えると、我々の将来の問題とも考えられます。

ではどうすればいいか、答えは調達できる環境を作ること

では一体どうすればこの問題は解決できるのでしょうか。答えは、調達できない環境で自動車に乗らざるを得ないならば、調達できる環境を国が整えてあげるという事です。

どうしても民間のスーパーは、収支を重視し儲からない場合は撤退します、当然の事でしょう。とすれば、国や地方自治体レベルでスーパーを作ったり、食料を調達できる環境を整えてあげるべきです。移動スーパーを週1でおこなっているところもあり、そこで会話も生まれ無事も確認できます。

更には移動銀行を行っているところもあり、ATMバスのようなものが近所まで来てくれます。そうすることで、食べ物を調達しないといけないから無理に自動車で・・・という必要が減ってきます。免許の返納は物資の調達を整えてあげることが1番の近道なのです。