毎月分配型の投資信託で純資産額が多い投信は買っても良いのか?データから見てみよう

日本では数千もの毎月分配型投資信託が存在します。しかしその大半が将来性の見込みも無いもので、資産運用には向いていません。買うに値するものか、買ってはいけないかは実績値を見れば大体分かります。目安はずばり「手数料」と「運用実績」です。


スクリーニング条件

今回のスクリーニング条件としては、シンプルに下記の4条件です。

毎月分配型投信であること

毎月分配型を使い、資産運用をします。毎月分配金をもらい、基準価額をある程度維持し投資資金を増やします。

償還日が無期限であること

途中で償還(ファンドが終了)してしまうと、今後の資産運用プランに影響が出ます。基本的には無期限のものを選びましょう。超短期で売り抜けする場合は、期限付きもアリです。

純資産総額が1,000億円以上であること
純資産総額が少ないと、規模が小さく運営に支障をきたします。資産が少なく、内部で調整が効かず守りばかりになります。最悪の場合は、繰上償還なんて事態も引き起こします。特に毎月分配型は、純資産からタコ足として配分している場合が多いので、少しでも多いに越したことがないです。

もう1つ可能であれば加えたい条件があります、それは販売手数料です。

購入時の手数料が無い「ノーロード」

手数料に多くお金を払っても得なことは何も無く、ファンドが儲かるだけです。少しでもリスクを減らして、少しでも資産を上げるために費用を削れるなら削りましょう。

代表的なファンドの実績値を確認

証券会社によって投資信託ファンドの扱い件数が異なり、そこでしか扱っていないものも多いです。一般的に扱っている代表的なファンドをチョイスしてみます。

見るべき項目は「手数料」と「過去の実績値」です。

ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)

世界各国の上場している「不動産投信」に投資しているファンドです。高い分配金と、不動産投資の旨みを狙うことで有名ですが、実態はどうなのでしょうか。

手数料:基本3.24%だがネット系で無料が多い(証券会社によって異なる)

信託報酬:年率1.62%

信託財産留保額:無し

手数料がかからないネット系証券会社を選びましょう。売却時も手数料が無いので、短期での利益確定として使っている方もいます。実質年間1.62%しかかからない低コスト投信です。

2004年3月26日から運営していて、償還日が無く「1兆2111億円」の純資産があります。

分配金は4,000円前後で60円が毎月出ています。年間で720円ですので、年利は18%です。ここから20%源泉徴収され、14.4%となり、信託報酬の1.62%が引かれ12.78%が正味のリターンです。

8月末時点での年間リターンを計算してみましょう。年間リターン算出は、期間内での再投資額を入れて計算しています。

6ヶ月 1年 3年 5年
リターン -11.67 14.35 22.30 16.79

5年間でリターン年率換算だと、15%は欲しいところです。ここから年間の信託報酬の1.62%を引くと、15.17%で15%は維持できる計算です。プラスになった分から、源泉徴収される分は考慮していません。

フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド

米ドル建て高利回り事業に投資しているファンドです。簡単に説明すると、信用力の低いところに貸しているので利回りが高く設定されています。格付けでBランクとかAランクというのを見ることがあるでしょう、B以下の事業に投資し、ハイリスク・ハイリターンとなることが多いです。景気が良くなっている際に投資するのが良いでしょう。リーマンショック以降は景気もマシになっていますが、一度景気が悪くなるとリスクが増します。

手数料:基本2.16%(証券会社によって異なる)

信託報酬:年率1.70%

信託財産留保額:無し

1998年4月1日から運営していて、償還日が無く「1兆810億円」の純資産があります。

分配金は5,000円前後で70円が毎月出ています。年間で840円ですので、年利は16.8%です。ここから20%源泉徴収され、13.4%となり、信託報酬の1.70%が引かれ11.7%が正味のリターンです。購入の際に2.16%手数料があるのがネックです。

8月末時点での年間リターンを計算してみましょう。年間リターン算出は、期間内での再投資額を入れて計算しています。

6ヶ月 1年 3年 5年
リターン -2.64 13.78 19.78 13.85

中国の影響が受けにくいのが良い点ですが、手数料が高い。5年間で見ると、13.85%から信託報酬1.70%を引いて、12.15%となります。プラスになった分から、源泉徴収される分は考慮していません。

フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)

アメリカの上場不動産投資信託への投資です。オフィスや工場・住宅などへの投資の割合が多くなっています。

手数料:基本2.16%(証券会社によって異なる)

信託報酬:年率1.512%

信託財産留保額:0.3%

2003年12月9日から運営していて、償還日が無く「9,117億円」の純資産があります。

分配金は6,000円前後で100円が毎月出ています。年間で1,200円ですので、年利は20%です。ここから20%源泉徴収され、16%となり、信託報酬の1.512%が引かれ、更に売却時に留保額として0.3%引かれ14.18%が正味のリターンです。購入の際に2.16%手数料があるのがネックです。

8月末時点での年間リターンを計算してみましょう。年間リターン算出は、期間内での再投資額を入れて計算しています。

6ヶ月 1年 3年 5年
リターン -9.40 19.11 23.67 18.74

5年間で見ると、18.74%から信託報酬1.512%を引いて、留保額0.3%も引いて、16.928%となります。プラスになった分から、源泉徴収される分は考慮していません。

グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)

昔の日本一の純資産を誇ったマンモスファンドです。世界の先進国で発行されている、高い信用力の債券で運用しています。ソブリン債と呼ばれるもので、政府や政府の関係機関が発行したり保証しているので、ハイイールドなどとは異なり信用力はかなり高いです。

手数料:無料(証券会社によって異なる)

信託報酬:年率1.512%

信託財産留保額:0.3%

1997年12月18日から運営していて、償還日が無く「9,017億円」の純資産があります。

分配金は6,000円前後で20円が毎月出ています。年間で240円ですので、年利は4%です。ここから20%源泉徴収され、3.2%となり、信託報酬の1.35%が引かれ、更に売却時に留保額として0.5%引かれ1.35%が正味のリターンです。分配金での利回りは低いですが、値上がり益は考慮していなく、安全性を重視している為です。

8月末時点での年間リターンを計算してみましょう。年間リターン算出は、期間内での再投資額を入れて計算しています。

6ヶ月 1年 3年 5年
リターン -3.42 8.45 12.45 7.54

5年間で7.54%です、ここから信託報酬1.35%と留保額0.5%を引いて、5.69%となります。ローリスクローリターンとはこのことです。プラスになった分から、源泉徴収される分は考慮していません。

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

世界の高配当利回り株へ投資しています。投資先としては、電力会社や水道会社・通信サービスや廃棄物・石油関連など、公益サービス系が多いです。北米や欧州を中心に投資されています。

手数料:基本3.24%(証券会社によって異なる)

信託報酬:年率1.788%

信託財産留保額:無し

2005年2月28日から運営していて、償還日が無く「8,869億円」の純資産があります。

分配金は5,000円前後で50円が毎月出ています。年間で600円ですので、年利は12%です。ここから20%源泉徴収され、9.6%となり、信託報酬の1.788%が引かれ、7.81%が正味のリターンです。

8月末時点での年間リターンを計算してみましょう。年間リターン算出は、期間内での再投資額を入れて計算しています。

6ヶ月 1年 3年 5年
リターン -14.41 0.56 17.17 9.57

5年間で9.57%となっています。ここから信託報酬1.788%を引いて7.782%となります。さすがにインフラ関連は利回りがそこまで高くありません。購入時の手数料も3.24%と高いのがネックです。

アジア・オセアニア好配当成長株オープン(毎月分配型)

日本を除いたアジア株への株式投資が主です。特に中国・香港・オーストラリア・台湾系が多く、銀行や電気通信サービス業が占めています。中国の影響をかなり受けますので、最近の中国不透明時代に甚大な影響を受けました。

手数料:3.24%(証券会社によって異なる)

信託報酬:年率1.728%

信託財産留保額:0.3%

2005年10月27日から運営していて、償還日が無く「7,465億円」の純資産があります。

分配金は4,000円前後で75円が毎月出ています。年間で900円ですので、年利は22.5%です。ここから20%源泉徴収され、18%となり、信託報酬の1.728%が引かれ、16.272%が正味のリターンです。

8月末時点での年間リターンを計算してみましょう。年間リターン算出は、期間内での再投資額を入れて計算しています。

6ヶ月 1年 3年 5年
リターン -27.21 -6.60 15.13 9.82

信じられないくらいのマイナスになりました。中国経済が好調な内は良いですが、悪くなるとしわ寄せがモロにかかってきます。

5年間で9.82%となっています。ここから信託報酬1.728%を引いて留保額0.3%を引いて、7.792%となります。さすがにこれ以上下がらなさそうですが、先行き不安感は拭えません。。購入時の手数料も3.24%と高いのがネックです。

毎月分配型投信はハズレが多い

毎月分配型投信のほとんどが、運営状態は健全ではありません。中には運営状態の良い、国債関連のように安全性を重視したもので一部ありますが、投資とは本来リスクを取っていくものです。

巷でよく言われるのが、インデックス投信と毎月分配型投信のどちらに投資をすれば良いかですが、別にどちらでも構いません。大事なことは「投資してどれくらいの利益を得たか」という事実です。リスクとリターンを天秤にかけて、本当の利回りを計算し資産を増やすことが出来れば、資産運用としては本来の役割を全う出来ているのではないでしょうか。